東三河ジオパーク構想実現に向けて(提唱)

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豊川の上流にある滝幅80メートルの葭ケ滝(よしがたき)

  2013(平成25)年6月に新城にて提唱しました。自分自身、日本(世界)ジオパークを30か所以上視察して、東三河地区8市町村の連帯において、各市町村のジオサイトの価値はすばらしいものがあり、政治経済の連帯はさまざまな立場での利害関係や見解がありますが、豊川(リバー)を母なる川としての地域文化圏の自然を地域資産として光を当てていくことは、すべての市町村にメリットがあり、自然・ジオというカテゴリーで連帯できると思ったからです。

    東三河(新城)ジオパーク構想 (提唱)

~「自然資産」で「地域の活性化」を図る~   2013.6

1 古い街に「有って無いもの」

古い街には、長い歴史と伝統、豊かな文化が有ります。

「新城」も、奥平信昌が築城の1576年から438年、

「野田城」も、菅沼定則が築城の1508年から506年の歴史があります。

この土地に人が住み、街を作り始めてから数百年。

恵みを授かるとともに、時に、怖れおののいた、市民が暮らすこの大地は、万年、億年のかなたから、息づき、形づくられてきました。

大地の姿も、湧き出る水も、育つ草木も、流れる雲も、輝く光りも、人知の及ばない世界ですが、人をそだて、文化をはぐくみ、歴史をつくり、地殻変動や火山活動とともに、壮大なドラマを展開してきました。

この大地のドラマは、古い街に必ずあるとは限りません。県内・国内でも、古い街は、数多くありますが、地質・岩石、動植物、美しい地形などの「自然資源」は、偏在します。

古い街に、必ず有るものが、歴史・文化ならば、必ずしも無いものが、自然資産。特に、地質・岩石。わたしたちの街・新城には、豊富な「自然資源」がいっぱいあります。

東海・東南海・南海の大地震が確実視されている今、わたしたちが生活している大地に目を向け、その神秘とロマンを探ってみたいと思います。

(英訳)The things old cities have and do not have

Old cities usually have a long history, tradition and rich culture.  Shinshiro City also has a long history; 436 years have passed since Shinshiro Castle was built by Okudaira Nobumasa, a general, in 1576 and 837 years have passed since Noda Castle was built in 1175.  However, these man-made structures’ ages can be measured in mere centuries. The land itself, on which people have lived, sometimes reaping the benefits and at other times fearing the forces of nature, was made and formed millions of years ago.

The land, gushing water, lush grasses and trees, drifting clouds, sunshine; although these are beyond human knowledge, they have really bred human beings, created culture, changed history.  They have caused huge drama with volcanic activities and the movement of the earth’s crust and fearsome typhoons.

Old cities have not necessarily had this kind of drama.  There are a lot of old cities all over Japan but “natural resources” such as beautiful land shapes, valuable geological features, rare plants and animals are unevenly distributed.  In Shinshiro, we have these natural resources in abundance.

“Natural resources” and “geo” are phrases that cover a vast range of wonders, and I will endeavor to give these more thought in the future.

※国境は人為的なもので、大地は一つにつながっていますので、冒頭、世界に向けて英文を掲載しました。

2 新城の大地のルーツ

 137億年前のビッグバン。そして、46億年前の地球誕生。大気が生まれ地殻ができ、雨が降り海ができ、長い時空を経て、40億年ほど前に生命が誕生する。

バクテリアから微生物、そして、多細胞生物が出現し、繁栄と絶滅を繰り返し、5億年ほど前から多くの動物が出現。やがて、海から陸へと、植物が上がり、動物が上がった。

3億年前にはゴキブリが現れ、1億年前まで恐竜が繁栄し、200万年前に石器を使用する原人が現れ、20万年前に現在のヒトの祖先ホモサピエンスがアフリカに現れる

12万年前から火を使い、10万年前から世界各地にひろがる。温暖と寒冷、間氷期と氷期、厳しい自然環境と闘いながら命をつなぐ。

13000年前に、日本が大陸から離れ、列島を形成。8000年ほど前から、磨製石器が使われ、農耕が始まる。

5000年前に、古代エジプト文明、メソポタミア文明が現れ、そして、20世紀以降、人口が爆発的に増加する。

新城・東三河的には、1億年前の大地殻変動で、日本一長い大断層、中央構造線が生まれ、東三河の中央を走る。

1700万年前、太平洋は、深く奥三河まで入り込み、豊かな海を形成し、現在、その証拠として、新城の山里に多く貝の化石を残した。

1500万年前、鳳来寺山あたりに、冨士山に匹敵する設楽大火山が出現し、大量の火山灰と溶岩流を周辺に拡散した。現在、その証拠として、新城の山里には、凝灰岩、蛇紋岩、松脂岩など岩石の種類が豊富で、その岩間からは、水晶やメノオ、黄鉄鉱や黄銅鉱など鉱物も多い。

やがて、風雨の浸食にさらされ、東三河の母なる大河「豊川」が生まれ、赤石山系と木曽山系にはさまれた大地に、草木が豊かに繁茂し、虫や魚や動物たちも数多く生息した。

7000年前の旧石器、縄文、弥生時代の遺跡も多く、古来、多く人が住む。

有史以降では、702年に持統上皇が御津に僥倖し、703年に文武天皇の勅使が鳳来寺に利修仙人を訪ねた。

以後、新城、東三河の大地は、その特色を生かした産物がつくられ、その地形を利用した歴史文化が築かれてきた。

新城・東三河を紹介するとき、大地(ジオ)ぬきで語ることはできない。

3 時代や社会は「自然」を求めている

 茶臼山の「芝桜」に名号の「節分草」、賀茂の「花ショウブ」に西川の「カタクリ」、宮路山の「ドウダンツツジ」に萩の「コバノミツバツツジ」 蒲郡の「アジサイ」に田原の「シデコブシ」、乳岩の「ロッククライム」に県民の森の「トレイルラン」、鳳来寺山の参道に本宮山の登山、四季折々、東三河の人々は、自然の織り成す花や風景に魅せられて、動きます。

 新城市の「DOS再生プラン」は、内閣府地域再生事業の認定第1号(平成16年)となっています。「新東名高速道路」や「三遠南信道路」の開通によって、新城市をはじめ東三河の自然は、日本列島の中央部にあるという地の利からも、県内はむろんのこと全国から熱い視線を集めています。ちなみに、DOSの「新城ラリー」をはじめ「新城トレイルラン」「ツールド新城」など、インターネットを検索してみれば、その世界における注目の高さがよくわかります。

 そこで、こうした国民的志向に応えるためにも、この東三河の「自然資源」を活用し、地域の活性化を図る活動を、観光協会はじめ、商工会、NPOなど民間活力を基盤に、地域住民全体の理解を得て、8市町村が協力して立ち上げたいものです。文明発展の歴史において、自然は、これまで開発の対象であっても、自然そのものが価値ある対象として取り上げられてきませんでした。しかし、科学技術を急速に発展させてきた20世紀から、持続可能な地球環境を求めての21世紀という流れにあって、東三河で暮らす私たちにとっても、自然に目を向けることは、必要な営みではないでしょうか。

 また、人材育成、教育的側面からみても、「ふるさと東三河の大地」を愛する子供を育むことで、真の意味での「愛郷心をもった人間」が育つことと思います。東三河は、「歴史」や「伝統芸能・民俗文化」においても、日本の東西文化のはざまにあって、豊かな特色あるものがあります。ただ、この稿では、あえて、他地区との差別化、特色化を図る意味で、「自然資産」に絞って考えてまいります。

 広く世界に目を向けても、「世界遺産」とともに、「世界ジオパーク」が注目されています。前者が「保全・保護」を目的とするのに対して、後者は「保全・保護」とともに「活用・活性」を図ることを目的とします。近年、この地に愛知県の「東三河県庁」ができ、「地域の活性化」を図ろうとしています。

 そんなとき、尾張・知多・名古屋や西三河と同じ発想では、東三河は立ち上がれません。これまでの轍を踏むことになり、その相対的位置関係は変わらないと思います。産業・経済の活性化は当然のことですが、そこに「東三河らしさ」が必要です。その鍵となるのが、県下他地区に傑出した東三河の「自然資産」の活用ではないでしょうか。

3 「ジオパーク」にふさわしい東三河の豊かな「自然資源」

 「自然資源」の価値を図る尺度の一つとして、「天然記念物」「名勝」の文化財指定があります。

 愛知県には、市町村に所在する国指定の天然記念物が25あり、そのうち東三河が15(63%)と、偏在しています。さらに、そのうち新城が6(40%)を占めます。ほかに、蒲郡3、豊川2、田原2、豊根1、豊橋1があります。また、名勝については、愛知県全体で5あり、そのうち3(60%)が東三河の新城にあります。(国指定文化財データベースより)

以下が、東三河地域の国指定の天然記念物ならびに名勝です。

  • 川宇連ハナノキ自生地             豊根村
  • 阿寺の七滝    (名勝 日本の滝百選)   新城市
  • 鳳来寺山     (名勝 日本の地質百選)  新城市
  • 乳岩および乳岩峡 (名勝)          新城市
  • 甘泉寺のコウヤマキ(新日本の名木百選)    新城市
  • 黄柳野ツゲ自生地               新城市
  • 湯谷の馬背岩                 新城市
  • 御油の松並木                 豊川市
  • 牛久保のナギ                 豊川市
  • 清田の大クス                 蒲郡市
  • 大嶋ナメクジウオ生息地            蒲郡市
  • 八百富神社社叢                蒲郡市
  • 石巻山石灰岩地植物群落            豊橋市
  • なぐさのシデコブシ自生地           田原市
  • 宮山原始林                  田原市

 また、愛知県指定で市町村に所在する天然記念物は52あります。そのうち、東三河が19(37%)で、うち新城が5(26%)で、ほかに、設楽3、東栄3、豊橋3、豊川2、田原2、蒲郡1(文化財ナビ愛知より)であります。このなかには、豊橋の「葦毛湿原」、新城の「長の山湿原」、田原の「黒河湿地」や、設楽のホソバシャクナゲ、田原のハマボウ、あるいは、新城の蛇紋岩、東栄のポットホールなど数多くあります。

 さらに、新城市の場合、「市指定」の天然記念物は、二けたの数を有し、いずれも、国・県と比較しても、遜色のない価値ある自然資源です。全国の市町村自治体をみても、これほど多くの「自然資源」の「指定」を受けているところは、多くはありません。そして、「無指定」の「自然資源」を挙げても、鳳来峡、寒狭峡、百閒滝、不忍滝、島田の棚田など、いくつも挙げることができます。

 文化財指定の天然記念物のほかにも、もう一つの価値判断の尺度として、「日本百選」の選定があります。この面でも、「日本百選県別データベース」によれば、愛知県全体で94の百選があり、そのうちの36パーセントの33個が東三河にあります。うち新城が14個です。自然関係の主なものは、下記のようです。

⓵日本の観光地百選 鳳来寺山(新城市) ②③ 水源の森百選   県民の森  段戸裏谷原生林 (新城市 設楽町)④日本の地質百選 鳳来寺山(新城市)⑤日本の百名湯 湯谷温泉(新城市)     ⑥⑦ 日本百名木 甘泉寺のコウヤマキ 鳳来寺の傘杉(新城市  ⑧⑨ 日本の棚田百選 四谷の千枚田 長江の棚田(新城市  設楽町)⑩ 日本の滝百選 阿寺の七滝 (新城市)⑪ 森林浴の森百選  県民の森(新城市)⑫ 日本の里百選 川売地区             (新城市) ⑬日本の風景百選 電照菊栽培の温室(田原市)      ⑭日本の音百選 恋路が浜の潮騒(田原市)⑮新日本旅行地百選 伊良湖岬 (田原市)⑯⑰ 日本の白砂青松 恋路が浜 伊良湖開拓海岸防災林(田原市)⑱日本の渚百選 恋路が浜(田原市)             ⑲日本百景 蒲郡海岸(蒲郡市)⑳日本の百名峠 本坂峠(豊橋市)㉑㉒日本の自然百選 汐川干潟 葦毛湿原(豊橋市 田原市

 市町村により数の多少はあるものの、各市町村には、指定されていない名勝も多々あります。それらに新たな光を当てるとともに、この恵まれた「自然資源」を観光など地域活性化に活用しない手はありません。それが「東三河(新城)ジオパーク構想」です。これら自然資源を再発掘し、系統立てて構築することが求められます。今後、東三河(新城)ジオパーク構築を8市町村で進めていくことが望まれます。

コメント

  1. 東郷中 教え子の林 より:

    以前和田先生にお会いした時に触れられた新城の”蛇紋岩”については和田先生のことなのでなにか試していそう?(^^)と思いましたし、イロイロ調べましたら設楽の地質に壮大なスケールの地殻変動の歴史の詰まった姿が見えてきました。
    昔から地質には興味がありましたがこれ程ダイナミックで壮大なスケールの地殻変動の歴史がこの地であったとは夢にも思わず興奮しました(^^)

    • morimorigenki より:

      林さん、丁寧なコメントありがとうございます。新城市は、スケールの大きさはともかく、まさに「ジオの宝庫」と言えます。私も、小中学生のころは、自転車で市内のあちこちを走り回り、岩石や鉱物、化石などを探索して集めたものでした。そうした市内の地質岩石の由来を、林さんが、わかりやすく、コンパクトな動画にまとめられ、驚きました。著作権の問題さえなければ、学校教育の場でも使える素晴らしい教材です。地元に戻られた際に、ご自分の足で現地を確かめられると、より感動させられることと思います。

  2. 横山先生の教え子 より:

     
     東愛知新聞にこのホームページの紹介がありましたので、訪れてみました。この項目が特に心に残りましたのでコメントを寄せさせていただきます。
     東三河ジオパーク構想は、我が恩師、故横山良哲先生の念願であったように思います。鳳来中勤務時代、毎年理科の時間に中学1年生に「鳳来の地質」について話をしていただいたことをつい昨日のように思い出します。先生の早い逝去に大変残念に思っているのは私だけではないでしょう。
     横山先生は、国指定の天然記念物が新城地方の鳳来に5つ、作手に1つ、これだけのものがあるところは全国をみてもあまりない、とよくおっしゃっていました。また、151号線バイパスを作る工事の時に、大海の貝化石(ハマグリ)が多数出て、新城市内の小中学校に配ったこと、道路工事による露頭が出たときには必ず声を掛けてもらえるように工事関係者に声を掛けていたことなど、聞いたことを書いたらきりがありません。
     もうひとつ、湯谷温泉の「馬の背岩」は国指定の天然記念物なのに、全長2.9km、幅約10mもの「障子岩岩脈」が指定を受けていないのはおかしいと話をしていました。岩登りのできる方と同行しないとなかなか見るのが難しいようです。指定する学者が現地に行けないことが指定されない原因だとおっしゃっていましたので、道をつくって多くの方々が見に行けるようにすることが後を任された私たちの仕事だと思います。

    • morimorigenki より:

      コメントいただき、ありがとうございます。言われますように、横山先生の早世は、本当に悲しく残念なことでした。先生がご尊命なら、東三河ジオパーク構想も、力強い展開ができていることと思います。「障子岩岩脈」は、実に大きな長い岩脈で、宇連ダム奥の国有林のなかにあり、途中の道のりも険しいものです。新城一というか、日本有数のジオサイトと言ってもいいと思います。多くの人々に知っていただくためには、アクセス道路を整備する必要があります。観光資源として市行政が認識して力を入れるかどうかにかかっています。乳岩、宇連ダムなど、鳳来東部地区は、岩や滝など、ジオの宝庫です。川合の「幻の百閒滝」も、一色の「百閒滝」同様、すばらしいジオサイトです。

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